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お別れ その3

それから出身校に行った。周囲をグルーっと回って工事の状況を見る。躯体から足場が外れて、新しい校舎が顔を見せている棟がある。

そして、学校前の売店に行ってみた。オバチャンがいた。オバチャンもこの先生が亡くなったのを人づてに聞いて知っていた。今日が葬儀なのであの人(自分の事)も来るのかなと思い出していたと話していた。

オバチャンは声が弱くなっているように感じた。手を耳に当てないと聞き取れない感じ。

「膝の具合はどうですか」

オバチャンの両膝には人工関節が入っていて、その後に不具合は出てないのかしらと心配になった。具合はいいとの事で、一安心。

「卒業して何年経ちなすった?」

計算してみる。ん?ん?ん?

「25年ですね」

もう、そんなに経ったのかと戸惑った。

「何だか、つい最近のように思えます」

オバチャンはずーっとここで店をしていて、在校生を見てきている。卒業アルバムをお見せた時、「この子は…」という具合に意外とよく覚えておられるのにはびっくりした。もちろん自分たちだけではないから何十年という積み重ねがある。自分たちだけでもよく覚えておられるのだから、何十年分の生徒を覚えておられる事になる。改めて驚きます。

ずーっと店をしていて、定休日なんてあるのかな。部活の朝練で登校する生徒の為に早くからお店を開けていて、練習で遅くなる生徒の為にもお店を開けている。

在学中の事だけど、野球部員が練習で帰りが遅くなった。

「オバチャン、店開けて、待っててくれるんだ」

と話していたのを今でも覚えている。

オバチャンからウーロン茶とフキをご馳走になり、これも忘れられない味。

ずーっとお店をしていて、生徒を待っている。たまに卒業生が顔を見せれば嬉しかろう。

「こちらに来たら寄りますね」と立ち上がる。

陳列棚にあるコーヒーパンを買う。

125円を財布から出して、値段をよく見ると126円だった。

慌てて財布から1円玉を出して渡そうとするのだけど、オバチャンは受け取ってくれない。

在校生にもこの様に販売しているとか。

126円のコーヒーパンを125円で販売しているのです!

何回かやり取りしたけど、こちらが折れた。

ありがたくも1円玉を受け取った。オバチャンにとっては自分はまだ高校生のようです。

ここではまだ高校生なんだなと思いながらお店を出たのでした。

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“125円”のコーヒーパン

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